外歩けば、至る所に「立入禁止」の文字が見つかる。
人は元来「禁止」という言葉に弱い。「ダメですよ」と言われたことに対するやりたい欲が膨らんで仕方なくなる。だから医者から喫煙を禁止された患者は大体その後ますますタバコ中毒になるし、ゲームを禁止された香川県民は例外なくその後ゲーマーになる。
しかし、立ち入りを禁止された場合はどうだろうか。
「この芝生の中は立入禁止です」と言われようが、そこまで芝生が魅力的に見えてくるわけでもない。
「係員以外は立入禁止です」と言われようが、人目を忍んでそっと扉を開けてみようとなるわけでもなければ、これがきっかけで係員志願者になるわけでもない。
それが「立入禁止」の限界。そこまで欲望を掻き立ててくるわけでもない、虚しい存在。
でも「立入禁止」の文字をぼーっと眺めていると、「ああ、ここ以外の場所は『立入禁止』じゃないんだなあ」と改めて気づかされる。まだ足を運んでいないあそこや、普段通り過ぎているあそこだって、「立入自由」なんだ。自分が自由に立ち入りできる場所はこんなにも広いんだなあと、そっと教えてくれる。
これが「立入禁止」の魅力。「立入禁止」の看板や張り紙は、街中のプチ廃墟である。
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