虚シコウ

粗い構成!薄い内容!ほとばしる素人意識!AI社会で虚快に暮らすヒント!

「病院で買ったテレビカード」 - 虚博物館 1

虚博物館 展示(製品)
「病院で買ったテレビカード」
2022年 日本・東京

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なんと言っても表のデザインが目をひきます。

手に取って第一印象が「古いなー」。廃墟に落ちていたら映えそうな遺物感がたいへんよろしいですね。
で、第二印象が「数学ⅢCの教科書の表紙っぽいな」と。
中高時代に実際に使っていた数学の教科書のデザインとは全然違うはずなんだけど、頭の中で勝手に「数学の教科書デザインはこうあるべきだ像」が形成されていて、それに非常によくマッチしています。

数学ⅠAは白背景にポツンと寝かされる点と線なんですよ。ひたすらに無機質、味気ゼロ、図形が起きる前なんです。
で、数学ⅡBは黄緑色の背景に、三角や四角が置かれている。ちょっと起き上がり気味で。昼下がりの地上感があるといいのかな。
そして、数学ⅢCは、宇宙空間に浮遊する球体のイメージで、まさしくこのテレビカードのとおりであると合点がいったわけです。

 

 

次に、裏面の「カードご使用上の注意」をみてみましょう。

> 当病院内のベッド脇の備付けテレビ等でご利用になれます。

ええ、テレビカードって実はテレビにも使えるのか!
洗濯機と乾燥機を回すためだけに買ったので、テレビカードをテレビ観るために使うという斬新な発想はありませんでした。注意書き読んどいてよかったな。

 

> 発行会社のカードリーダーのある機器等でもご利用いただけます。

なんかこの文も好きですね。
正直、退院後にカードリーダーのある機器等に遭遇する可能性、さらにはそのタイミングでこのテレビカードを持っている可能性って、ほぼゼロに近いでしょう。
「ある日突然街中に出現するかもしれないカードリーダーのある機器に備えて肌身離さず持ち歩いていてください」というメッセージにも受け取れます。
どこに出没するかな。渋谷のスクランブル交差点?鳴門海峡の渦潮?
家に帰って玄関に突然あったら怖いな。
いや、それよりも朝起きたら自分の額にカード挿入口ができている方が恐ろしいな。

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> 原則として換金はできません。

この文にも、ちょっとゾワッとしてしまいます。
換金って「お金ではない物」をお金に変える事じゃないですか。でも、テレビカードは「お金ではない物」感が薄いんですよね。なんというか、ほぼ1000円札じゃん、お金じゃん。だから「両替は出来ない」じゃん、って。 ね。…これはイチャモンが過ぎたかもしれない。アタマから一々口出して煩いのであと1文だけ。

 

> 残り時間または度数は、カードリーダーで確認できます。

この「残り時間」と「度数」、いったい何の時間と数なんでしょうね。
たとえば「仏の顔もn度数」。このテレビカードは別称「仏のカード」で、残り時間以内であればいつでも仏を呼び込む事が出来ますが、あと2度でブチ切れますよ、代償として身長奪いますよ……これだとドラえもんのデビルカードと変わらないか。じゃあ代償に持ち金を…だと、今度は桃鉄のデビルカードか。で、実は「悪魔の顔もn度数」だった、みたいな設定は考えられますよね。

それよりも虚しいのは、「カードリーダーで残り時間または度数を確認できる残り時間・度数」だった場合でしょうか。あと100度とか1000度とか残っている状態で、このカードには何か物凄い効力があるに違いないと盲信して、度数の意味を巡る謎解きを始めちゃったら最悪ですね。ゼロになってはじめて度数の意味を知り無為にしてきたこれまでの時間を嘆くのみでしょう。

 

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※個人的に好みな「虚」を感じる事物を展示する「虚博物館」の構想を描いています。