虚シコウ

粗い構成!薄い内容!ほとばしる素人意識!AI社会で虚快に暮らすヒント!

いい大人のくせに児童用プールでバタフライをキメて見栄を張るシュール免罪符君


『……バタフライって虚しいでしょう?
クロール、いいですよね。速くて王道で。泳ぎの代表がクロール、というより、クロールする事を後々『泳ぐ』と呼びはじめたのだと信じています。私だけじゃない、クロール。…クロール!誰しもがクロールのことを「正しい」と認めている!
で、クロールを裏返すと背泳ぎになる。クロールと表裏一体の関係。基本的に人間は背中とお腹を常時切り離すことなく生活するので、水中でクロールをすると同時に空中で背泳ぎもしている事になる。頼まれてもないのに、自ら率先してダブルワーク…情けない……ああ私は水で無闇にもがく無能な働きアリです。でもこれもまた、人としては「正しい」事なのです。
人に疲れた人には平泳ぎがあります。カエルとなって世の喧騒から逃れます。大海を知ってから井の中の蛙になるのがよかろう。ちょっと泳いでゲロゲロ鳴いてたまにゲロ吐いてそれで1日は終いです。
そしてバタフライ…バタフライ!?バタフライが何故、基本泳法面している?考えてみてほしいですよね、あなたが海で遭難した時、陸地までバタフライしますか?基本のクロール、呼吸が楽な背泳ぎ、安定感がある平泳ぎ、……カッコつけのバタフライでしょ?バタフライって泳力のアピールでしかないんですね。実用性がない。四泳法から外した方がいいですよ。代わりに犬掻きでも入れましょう。なんかそっちの方が教育的じゃないですか、愚直に頑張る素晴らしさーって感じで。小手先虚勢張りのバタフライとは違って。はい、改めて言います、バタフライはすごく虚しいです』
と、見知らぬベタな子供に言われて腹が立ったので、児童用プールでバタフライをキメてきたんだ。」

「なるべく多くの子供たちの視線を集めた上で、真剣にバタフライをしてやった。ふざけていない。おちゃらけ感を出したら、内輪で盛り上がり調子づいたベタな新成人と同類になってしまう。アイツらにシュールレベルの差を見せつけるためにも、精悍な面構えだけは保ち続けた。漆黒のゴーグルも絶対に外さない。ゴーグルは高級であればあるほどシュールな画になるからね。」

と、シュール免罪符君が自慢げに語る。シュールを履き違えたただの迷惑行為である事を本人は気づいていない。