10がつ31にち
インフルの予防接種しに近くのクリニック行ってきた。
あれ、注射という行為をするのはお医者さん側で、僕はあくまでも針をさされる側なのだから「予防接種されに」と受け身形でいうのが正しいのか?
あと、インフルエンザのことを「インフル」と言うのなら、「インフルエンサー」の事はなんと略すのだろうか? インフルエンサー達は自己紹介するときに「どうも、インフルやってます」って言いたくならないのだろうか?
とかどうでもいい独り言を頭の中で反響させながら受付を済ませ、座って診察待ちをしている時、ふと上に設置されているテレビに目をやったら通販番組が放送されていた。
僕は決して通販番組の世情に明るい人間ではないが、いかにも長年商品をPRしていそうなキャスティングだった。アンミカとクワバタオハラのメガネしている方が出ていない事を除いたら、THE・ショッピング!!という感じの番組だ。
僕が見始めたタイミングは、どうやら羽毛布団の説明を一通り終え、いよいよスタジオの皆さんに商品の素晴らしさを体感してもらいましょう!というところだった。
「えぇ〜!私からでいいんですか〜!」
と声を張り上げるベテランA。
「ええどうぞ、中に入って見てください!」
と強く促すベテランB。
いそいそと布団に入り、すぐさま
「あら、もうあたたか〜い!!」
と言うベテランA。その声量に思わず
「お〜」
と唸る素人A(僕)、横で無関心な素人B(僕の隣に座っていたご老人)。
「ほら、あなたも使ってみなよ!」
とのベテランAの声かけに
「それではお邪魔しまーす!」
と応えるベテランC。「お邪魔する」とのワードチョイスがしっくりくる位丁寧に布団に「お呼ばれ」し「入室」するベテランC。そして、彼女も入ってすぐボソッと一言、
「寝れる」
と。かの『ドラえもん』の主人公・のび太は、横になってからわずか0.93秒で眠りにつくことができる天才との呼び声が高いが、彼と真正面から対抗できる睡眠速度を有することをさらっとアピールするベテランC。
さらに、
「羽毛ぶとんってこんなに軽かったっけ?本当かぶってる? 今私かぶってます?」
とのセリフもキメてくる。
そして、絶妙な間合いで
「さあ、あとは気になるお値段ですが...」
と口を開くベテランB。
「本来17900円のところ… 今回44%オフでなんと10000円です!!!」
ここで、スタジオ内には今日イチのどよめきが起こっていた。
いや、どよめいていたのはスタジオだけではない。僕もだ。僕の心のなかにもスタジオと負けじ劣らぬどよめきが起こっていた。
おいおい、通販番組ってすげー!
なんだこのベテラン同士の高度な掛け合いは!!
商品の良さを宣伝することにこれほど魂を売れるのか!!!
今エンディング的に流れている「もっちりとした ボ リ ュ ー ム 感 ! !」「しかも あ ら え る ! !」って声もすごい響いてくる!!!!
と、感動が冷めやらぬうちに、自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。ああそうか、ここはクリニックの待合室で、自分は予防接種をされにきたんだ...いやあ、思いがけず良いドラマを観たな...
とか、本当に心の底から思えたら、いいのになぁ。